桐生タイムス | 両毛産業遺産研が15周年記念誌を刊行

きょうの夕刊

両毛産業遺産研が15周年記念誌を刊行

2010-2-26

 桐生を拠点とする両毛産業遺産研究会(亀田光三代表)の、15周年記念誌が刊行された。明治20年(1887年)に設立された日本織物株式会社の遺構である発電所跡(桐生市指定史跡、厚生病院前)の取り壊しの危機から、失われていく産業遺産を見直そうと、産業考古学会員を中心に発足した会で、見学会や報告会、講演会など活発に活動してきた。記念誌には11の論文を主に、これまでの歩みがまとめられている。
 巻頭の論稿は大島登志彦さん(高崎経済大学教授)の「産業遺産・産業考古学のあらましとその意義」で、この四半世紀で社会的認識が高まった産業遺産の調査、保存、活用に関する研究活動について、わかりやすく概説している。
 亀田さんは「伝統的技術の地域的差異について」、八丁撚糸(ねんし)機の場合を取り上げた。御召縮緬(おめしちりめん)の撚糸を行う八丁は、隣接しながら桐生と足利で著しく異なる。桐生の八丁は高級絹織物である御召製造のため、あらかじめのり付けした糸を強撚するのに対し、足利の横八丁では強撚後にのり付けする工程が連続で行われる。桐生の改良型とされるが、綿縮緬や薄手の絹など多様な織物に対応できるよう合理化し、生産性は約3倍に上がるという。
 その起源や水車との結びつきも含め、また京都や長浜などの八丁も視野に入れつつ、産地の特性による技術や機械の違いを述べた。
 また「両毛地方における座繰器の製法について」として、上州座繰りの木製歯車を一度に最大10枚つくることのできる特別な治具について報告している。
 ノコギリ屋根研究に先鞭(せんべん)をつけた野口三郎さんは、桐工教諭から中国蘇州に日本語教師として赴任しており、20年間にわたる調査研究をまとめた。発祥の地イギリスでも見学・調査しており、産業革命時代、多層式の紡織工場に力織機が導入されると、それに接して平屋のノコギリ屋根工場が建つようになったという。しかし地味な建物のためかノコギリ屋根研究は進んでおらず、野口さんはまさに世界の第一人者といえる。
 そのほか、川嶋伸行さんの「明治期における両毛地域の織物登録商標」、日下部高明さんの「意匠登録第1号の足利織物と近代意匠の流れ」、田中偉介さんは「近代実業高等教育の建物施設」で、現在の群馬大学工学部同窓記念館など桐生で多数の近代建築を手掛けた山田太市の事績をふくめて紹介。原眞さんは「群馬県にみる幕末〜明治時代の鋸鍛冶職人」として、桐生、大間々のかじ屋「中屋」と足尾銅山の関係など、ユニークな論文を収めた。
 同誌は桐生市本町四丁目のミスズヤ書店で、頒価1000円で扱っている。