きょうの夕刊
伝統のお召をジャケットに 八丁ヤーンの生地で
2010-2-20
織物の優れた伝統技術を残したい—。産地と仕立て人(サルト)の思いが1着に結実した。桐生を代表する着尺地であるお召に不可欠な「お召緯(よこ)」を復活させた八丁ヤーン(長田克比古社長)の糸で織り上げた濃紺の生地を用い、日本橋三越本店内に工房「サルトリアイプシロン」を構える船橋幸彦さん(57)がジャケットに仕立て上げた。
糸作りから復活したお召を未来に伝え残していくため、長田社長らは着物以外の用途を模索。洋服の生地としても使えるよう広幅での製織も可能にした。ミラノと日本に工房を構え、国内外の伝統技術を守ることに目を向けていた船橋さんが昨年の暮れから手縫いで仕立てに挑んでいた。
3月2日まで同店で開かれている「ジャパンクリエーションウイーク」で「桐生のお召ジャケット」として披露され、ジャケットと江戸刺しゅうで小紋をあしらったネクタイがショーウインドーに展示された。
今後も定番で取り扱う予定で、既に3着を受注済み。「お召は手で縫うことで生かされる」と船橋さん。強撚糸(ねんし)を用いた生地は名サルトをしても最初の1着を縫い上げるには苦心したが「手触りがよく光沢感があり、光に応じて色が変わり面白い。海外にはない生地で可能性がある」と述べ、イタリアでも発表したい考えを持っている。
「世界がグローバル化しているからこそ、地域の文化が大事。一度失うとお金で取り戻すことはできない。その点で長田さんたちの取り組みは素晴らしく、火さえ消さなければ何につながっていくか分からない。桐生の人たちが地域のものづくりを見つめ直し、文化の糸を次につなげていってほしい」と力を込める。
完成したジャケットを見た長田社長は「初めて洋服の形になり、希望の光にみえた」と感想。2人は「地元の人にもぜひ見てほしい」と、桐生での披露も検討していく。

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