きょうの夕刊
自然交配でカッコソウに種子 再生プログラムに実りの秋
2009-10-19
カッコソウの自生地を絶滅のふちから守る再生プログラムの拠点となっている桐生自然観察の森の移植地で、この春に咲いた二つのカッコソウの株から自然交配による種子が採取された。世界にひとつ、鳴神山の周縁にしか存在していないこの植物が、未来に命をつなぐためには絶対欠くことができないのが自然条件下での有性繁殖だ。現状はそれが望める環境にないことから人工授粉で種を育ててきた関係者にとって、これは待ちに待った秋の朗報で、今後、送粉したポリネーターはどんな昆虫なのか、種子の発芽能力はあるのか、それを調べる過程へと入っていく。保全に向けて、大きな前進である。
この再生プログラムの基本理念は、自生地の個体群が遺伝的な多様性を備え、その間を送粉者がとりもって相性のいい株同士の有性繁殖が行われるようになるまで、人為的援助で適応力を向上させることにある。現在取り組んでいるのが種子生産の促進や発芽処理、育苗、自生地への移植、さらに生育適地の導入、自生地外での系統保存であり、現在その拠点を担っているのが観察の森だ。
絶滅が危惧(きぐ)されながらも、長い間、結実はしないとされてきたカッコソウに学術的な光が当たったのが1998年、東京大学農学生命科学研究科の鷲谷いづみ教授が現地を訪れてから。その後同研究室と地元協力者たちが自生地の踏査を積み重ね、自生地同士の空間的距離的孤立が顕著で昆虫が送粉の役割を果たせないこと、カッコソウはクローン成長だけで命脈を保ち、遺伝的に異なる個体は十数個しかないことを確認。この状況下で盗掘が絶えないことから再生の方法論の確立が急がれ、自主的、実践的な態勢でこれを支えてきた。
山の斜面で役割を終えた葉陰で虚空をつかんだように立つ果序。なりはとても小さいが、希少植物の未来の夢を詰め込んだカプセルの成長に、関係者の喜びは大きい。

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