ぞうき林
居安思危
2010-2-13
昨年8月10日未明。台風9号が接近する中、桐生市広沢町内で傷害事件が起き、雨をついて現場に向かった。やがて雨脚が激しくなり、傘が押しつぶされる勢いだったので、近くの軒先で雨宿りしながら捜査を見守っていた▼午前2時すぎ、びしょ濡れで車内へ逃げ込み、携帯電話で確認した気象情報に目を疑った。取材ノートに走り書きが残る。「1位木頭(徳島)70・5ミリ、2位桐生52ミリ、3位福原旭(徳島)42・5ミリ、4位魚梁瀬(高知)39ミリ…」。当時の1時間雨量のランキングだ▼そのころ台風は高知県室戸岬の沖にあり、雨量の上位は軒並み四国なのに、なぜか遠く離れた桐生が局地的に“ゲリラ豪雨”の標的になったのだ。「そういうことはありうる」と、後で気象台の技官に聞いたが、側溝からあふれた濁流が道路に広がる光景には震えた▼8日の講演会で、群大工学部の清水義彦教授は河川工学、片田敏孝教授は防災と、異なる専門から同じ警句を発した。地球温暖化を背景に、豪雨災害が年々深刻化していること、扇状地の桐生は水害の危険をつねに抱えていること、さらに63年前のカスリン台風の教訓が忘れられている、という懸念だ▼片田教授は講演の最後に、中国の故事「居安思危」(こあんしき)を訴える。「安きに居りて危うきを思う」。平時にどれだけ危険を思えるかが防災の要諦なのだと。故事はこう続く。「思則有備 有備無患」(思えばすなわち備えあり 備えあれば患いなし)(成)

ホーム
HOME
前のページへ