ぞうき林
産業の近未来
2010-1-30
和装織物業の若手経営者との話の中で「うちがつくっている商品は今の日本人の生活の中で必ずしもなくて困るものではない」という言葉が出た。この国らしさを象徴する民族衣装であるにもかかわらず、着方すら分からない人が大多数を占めるのはおかしなことなのだが、それはともかく、日常着として着物や帯を身につけなくなったのは事実である▼「でも」と経営者は続ける。「だからなくていいかというと、そうではないはず。合理性や効率性だけでない部分でこうしたものは求められている」と。その通りだと思う。何でもよければ、海外で大量につくられた価格の安い洋服だけを選べば事足りるだろう。だが実際はそれだけではない。服だけに限らず、人は心の琴線に触れるものを選ぶ▼それが何かはそれぞれに異なるが、一定の成長を遂げて成熟した社会になったからこそ、大量生産ではないものがこれからはますます求められるし、大事になってくるに違いない。29日まで当地で開かれた「クリエイティブ・ジャパン全国大会」でも、その方向性は明確に語られていた▼示唆に富む数々の提言の中でも「伝統を守りつつそれを新しいものづくりに生かす」視点はとても重要だ。固有の伝統や文化芸術と産業とを結びつけ、そのまちでしかできない色やデザインの製品を生み出し、地域の産業を再生する。容易にできることではないが、その視点に立った挑戦は間違いなく必要になってくる。(悠)

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