桐生タイムス | 小説と現実

ぞうき林

小説と現実

2010-1-28

 本紙連載小説「手のひらを太陽に!」を、愛読いただいているだろうか。映画化された「ハゲタカ」をはじめ、「現代社会の光と影に注目し、常識のウソに鋭く切り込む小説家」真山仁さんが執筆中で、本日で第189回。目下は「きぬの市」の世界遺産登録運動をめぐる人びとの思惑や確執が、桑畑や青レンガ倉庫などを背景に渦巻いている▼企業買収や地方政治などの動きも盛り込まれているとはいえ、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録を進める群馬県を舞台にしたモデル小説と思う向きもいるようだ。地元であればあまりにリアルタイム、「富岡の赤レンガ」に対抗して「青レンガ」が描かれていることから、小説は小説として読むこともできよう▼実は他の地方紙にも連載されていて、富山県域の北日本新聞では本日で第140回、大分合同新聞では第78回。桐生タイムスがダントツで先頭を行く。そんなことを知らない富山県民に「群馬のことを書いた小説が載っている」と見せられたことがある。本紙とは組み方が違うので印象も変わり、虚実入り交じって見えたものだ▼日本政府は今、平泉(文化遺産)と小笠原諸島(自然遺産)の2011年登録を目指しており、残る暫定リスト10件中の群馬県の絹産業遺産群はその次に入るべく努力している。養蚕・製糸だけでなく「織物の桐生は不可欠」というかねてのラブコールに早く応えるのが賢明ではないか。それとも事実は小説より奇なりか。(流)