桐生タイムス | 不便

ぞうき林

不便

2009-12-29

 「不便だ不便だ不便だ不便だ/でも不便のが便利よりだいぶいい」。20年以上前に人気を集めたバンド「たま」の、「まちあわせ」という曲。バンドなのに、楽器演奏は鳴り物が何回か入るだけの、ちょっと変わった短い曲。当時は歌詞の意味がわからず、ただコミカルに見えた曲だったのだが▼漢検が認定する2009年の漢字は「新」だという。鳩山新政権、新型インフルエンザ、イチローの大リーグ新記録などが理由に挙げられていて、そう言われればそうかなとも思えるけれど、それを聞いたときの第一印象は「ええー? そうかあ?」というものだった▼改めて考えてみると、記者は「新」という文字に、肯定的なイメージを持っていたのだ。確かに「清新」とか「新鮮」とか「新風」とか、いいイメージだ。「新製品」といえば、旧製品よりも性能が良くなって、便利になっているはず▼便利を優先してきたおかげで、生活はずいぶんと楽になった。さらなる便利を求めていく気持ちもわかる。だけどその結果、例えば家電製品で、ン十万円もする掃除機とか必要だろうか? ン十万円もする炊飯器なんて必要か? 今は便利を求めるように見せかけて付加価値をつけ、利益を上げることに目がいっているような気がする▼不便に立ち返る必要はないけれど、不便なときのことを思えば、今、浴している恩恵の貴重さもわかるはず。「不便のが便利よりだいぶいい」。不便を忘れず、古いものを忘れず。(篤)